研究科の構成
現代社会では、高度な科学技術の発達によって物質的豊かさが満たされてきた反面、精神的豊かさが失われ、さらに物質的豊かさの内実も必ずしも健康で安全な生活を保障するものとはいいがたい。
そこで、物心共に豊かな社会を実現するために、伝統文化の再生、新たな文化と生活環境の創造が強く求められている。
このため、人間文化学研究科では、さまざまな地域社会の文化・社会環境および生活空間・生活材・人間関係を人文・社会科学と自然科学の双方から多面的に研究し、それらを総合的に検討する人材を育成し、より高度な学術研究と教育を推進するため、博士前期(修士)課程を引き継いで、本研究科博士後期課程に地域文化学専攻と生活文化学専攻の2専攻を設置することにした。
学部・研究科等の特色等
教育研究の特色
1. 本研究科博士後期課程は、それぞれの専門部門の研究を進めるとともに、「地域と生活に根ざした視点」を共有し、研究部門間の教育研究にわたる学際的連携を進めるとともに、学内外の共同研究プロジェクトに参加し、総合的な研究を展開する。とくに地域文化学専攻では、環琵琶湖からアジアに広がる地域学を学内外と共同で学際的に展開する。
2. 学際性と独創性を高めるために、学生は他研究科教員を含む教員、協力関係にある研究機関のスタッフなどの指導を受けることができる。ただし、最終的な指導責任は学生の所属する専攻の主任指導教員が負う。
3. 大学院教育に広がりを持たせるため、外国人留学生の受入れ、外国を含む他大学院との連携をも進める。
地域文化学専攻
本専攻においては、新しい時代に適合する地域社会はいかにあるべきかを考える教育研究を展開する。グローバリゼーションが進む一方で、逆に地方主権の必要性が説かれているなど、時代は変わりつつある。こうした難しい状況のなかで地域社会はどうあるべきかを考えることが本専攻の目標である。この目標のために本専攻には、日本・歴史文化論研究部門、日本・現代地域論研究部門、国際文化論研究部門を置く。
日本・歴史文化論研究部門では、近江や日本を中心に、地域社会の構造や文化を歴史的に考察するとともに、隣接地域にも視点を拡げ、日本文化との交流や異同性・関連性について教育研究を行う。
日本・現代地域論研究部門では、近江や日本を中心に、隣接地域にも視点を拡げながら、地域社会の現状を、社会学・地理学・民俗学・保存修景学・文化人類学の調査分析手法を用いて、背景にある地域社会の構造や社会意識を明らかにしつつ、地域活性化をはかるための方法を探ることを目的とした教育研究を行う。
国際文化論研究部門では、グローバル化というマクロ的状況の中で展開されている、アジア及び欧米地域の言語・文化・社会にかかる諸現象を、文化人類学・近現代史・言語学・文学などの学問的手法を駆使して教育研究を行う。さらにこうした研究成果を世界に向けて情報発信するための教育を推進する。
生活文化学専攻
本専攻においては、生活科学、人間科学の立場からライフスタイルと人間関係の問題を対象とする高度な教育研究を行う。すなわち、人間のライフサイクルの全体を通して、生活と社会との関わりを、生活デザイン、健康と栄養、人間関係の諸領域にわたって綿密に再検討し、真に充足された健康で快適な生活文化と生活環境を見いだすための教育研究を行う。このため、本専攻内に、生活デザイン論研究部門、健康栄養論研究部門、人間関係論研究部門を置く。
生活デザイン論研究部門は、生活の中でのデザインを探究し、健全なライフスタイルと生活環境をデザインすることを目的とする教育研究を、学際的な立場から展開し、新たな生活デザイン論の構築に努める。
健康栄養論研究部門は、健康と栄養に関する基礎から応用までの栄養科学にかかわる諸問題に関して、幅広い視点から理論的・実証的研究を行う。
人間関係論研究部門は、社会的に望まれる生活環境の中での人間関係の構造的・機能的特性を解明するために、人間の発達と形成、言語やコミュニケーションのメカニズム、人間行動の機構、現代社会の人間関係や比較文化などに関し、教育学、心理学、社会学、コミュニケーション論などの立場から学際的に追究する教育研究を行う。