学部・研究科等の特色等
○音楽学部のしくみ
沖縄県立芸術大学音楽学部は、音楽表現専攻、音楽文化専攻、琉球芸能専攻の3つの専攻から成ります。
このうち、琉球芸能専攻は、最も特色ある分野として、地域の個性的な伝統音楽、芸能の実技を教育しています。また、音楽表現専攻では、現代の音楽教育の普遍的基礎として、西洋古典の音楽を教育しています。さらに、音楽文化専攻は、両者を理論面から、または創作面から総合的に支える教育研究を行っています。
○音楽学部の特色
沖縄県立芸術大学はとても小規模な大学ですが、それゆえにこそ、少人数による徹底した教育、ひとりひとりを大事にした教育が可能です。そのため、学生の演奏機会を数多く設けています。舞台に立つ経験を数多く踏ませることもこの大学の方針であり、特色です。
音楽表現専攻は、声楽、ピアノ、弦・管打楽器のコースがあり、優れた演奏家による演奏指導はもちろんですが、アンサンブルを重視した教育カリキュラムを組んでおり、オペラ・アンサンブルや、合奏の授業が充実しています。とりわけ、1年次からオーケストラを学べることも魅力でしょう。作曲理論を学ぶコースでは、演奏家との協同作業を通じて自作品を音にすることを重視しています。
琉球芸能専攻は、琉球古典音楽としての三線音楽の実技や、琉球舞踊の実技を教えていますが、同時に、ユネスコ世界文化遺産にも登録された「組踊」という沖縄独特の歌舞劇を学ぶことができる世界唯一の教育機関です。
音楽文化専攻では、西洋クラシックの音楽と並んで、アジアのさまざまな民族音楽、沖縄の音楽を学ぶ体制が充実しており、さらに、音楽を社会に発信していくための学問、舞台制作、アートマネジメントを身につけるコースも特色となっています。
○カリキュラムの特徴
音楽基礎教育
沖縄県立芸術大学音楽学部では、音楽的基礎能力の涵養に力を入れています。ソルフェージュや音楽理論、副科楽器の基礎教育は、ともすれば必修単位をこなすだけのバラバラの科目と思われがちですが、本学部では、これらの科目を関連づけた教育内容を開発しています。また、優れた音楽を味わい、知ることと、こうした基礎理論と、さらには専門実技との関連がつながっていくように、学びやすい授業体系に努めています。
声楽コースは、個人レッスンのほか、合唱、重唱、オペラ総合実習、舞台表現演習などの実技科目により、アンサンブルの教育を重視しています。また、音声生理学や声楽史など、声楽を理論的にも学ぶことが出来ます。
ピアノコースは、個人レッスンのほか、伴奏法、ピアノ重奏、室内楽などの実技科目により、アンサンブルの経験を積みます。また、ピアノ構造学や鍵盤音楽史など、ピアノ音楽を理論的にも学ぶことが出来ます。
弦楽コース・管打楽コースは、個人レッスンのほか、弦楽合奏、管打楽合奏により、それぞれの楽器のアンサンブルを学び、さらに他の楽器と多様な組み合わせによる室内楽、さらには、4年間にわたるオーケストラの授業により、アンサンブルをしっかり学ぶことが出来ます。また、管弦楽法や管弦楽史など、管弦楽を理論的にも学ぶことが出来ます。
作曲理論コースは、作曲作品の指導を中心に、音楽理論の演習、管弦楽法や鍵盤音楽史などの理論科目が充実しています。実技面では上位学年でもピアノを深く学ぶほか、各種の楽器実技や、沖縄、日本、アジアの多様な楽器の実技も学べます。
沖縄文化コースは、沖縄音楽・芸能の歴史や理論を学ぶとともに、それを発信するためのアートマネジメントの理論を学び、これを舞台化する実践を体験します。公共文化政策論、楽劇理論、フィールドワーク、ポピュラー音楽理論など、幅広い学びができます。
音楽学コースは、西洋音楽、日本音楽、民族音楽についての幅広い知識を学び、さらに自分の問題意識でこれを究めていくことを目指しています。ピアノのほかに各種の弦・管楽器、日本の雅楽やガムラン音楽の実技を体験しながら、学びを深めています。
琉球古典音楽コースは、沖縄の古典的な三線音楽(および箏曲)実技の個人レッスンのほか、地謡のアンサンブル、諸楽器や舞踊の実技、組踊も学びます。また、琉球芸能の歴史や音楽理論、歌詞などの知識も学び、深い理解に立った演奏をめざします。
琉球舞踊組踊コースは、琉球舞踊と、沖縄の歌舞劇である組踊の実技を学びます。個人レッスンのほか、諸楽器演奏や扮装法の実技も学びます。また、琉球芸能の歴史や舞踊理論、歌詞などの知識も学び、深い理解に立った演技をめざします。
○共通の科目
音楽学部では、専攻の枠を超えた多彩な選択科目で広く自由な学びが可能です。洋楽が専門でも、三線や雅楽、ガムランの実技や琉球芸能史を学ぶことができ、琉球芸能が専門でも、洋楽の理論や楽器を学ぶことが出来ます。
また、舞台制作については、全専攻で学ぶことができ、実践経験も積むことができるので、卒業後の舞台活動の展開にも役立っています。
○卒業後の進路
音楽学部では、沖縄の地で育まれた個性の美である伝統芸能はもとより、西洋・東洋にわたる芸術音楽を体系的に研究教授し、将来、実演家、教育者、研究者をはじめとして、音楽芸術分野において社会に貢献できる人材の養成をめざしています。
これまでに、中学校、高校などの教育分野で多くの卒業生が活躍しているほか、さまざまな楽団や劇団、音楽ホール、楽器メーカー、楽器店、放送局、新聞社、博物館などで、大学で学んだ専門的な力を活かして活躍しています。また、旅行社、ホテルといった観光産業、地方公務員や商社、金融機関にも進出して、多様な能力を発揮しています。
また、自営の音楽指導者として活躍したり、音楽情報に関する企業を立ち上げた卒業者もいます。琉球芸能専攻では、本学の卒業生が国立劇場おきなわの舞台で重要な役割の大半を担うなど、大きな活躍がみられます。