学部・研究科等の特色等
学校教育に対する支援には,学習支援,行事支援,部活動への支援,環境整備,交通安全や通学支援等,多種多様な支援があり,「チームとしての学校」の実現は今後益々その重要性が認識されるものと考えられる。生徒指導や心の健康にかかわる活動など,多面的な支援を担うスクールカウンセラー等の学校臨床心理学的な専門性を有する人材による支援に対する期待は特に大きいと言え,学校教員や保護者と連携しつつ,児童生徒やその保護者並びに学校教員への支援といった,広く学校教育全体を視野に入れた臨床心理学的支援の専門家養成が必要である。今回新たに設置した「学校臨床心理学専攻」は,改組によって平成27年度に教員養成課程に一本化した教育学部の学校教育教員養成課程小学校教育コース心理学選修の学生や現職教員が進学してくることも想定しており,小学校教員の免許状を取得し,学校現場への理解を持ったこれらの学生を,心理学的な専門性を兼ね備え,学校教育を支援する人材へと育成することも目指している。また,「特別支援教育コーディネーター校内実践論」を新たに科目として追加し,学校教育現場における校内コーディネーターの役割と責務や円滑なコンサルテーションの進め方等について教育を行うとともに,既存の科目である「学校教育総合研究Ⅱ」,「臨床心理基礎実習」においては附属学校等での参観実習を新たに盛り込み,学校現場の実情を理解させる内容へと変更した。さらに,既設の学校教育専攻においては附属学校のボランティアカウンセラーとして大学院生を派遣していたが,この取組を「臨床心理実習」の一環として位置付け直し,従来の教育内容をより学校現場に結びついたものに改善した。
(教育課程の特色)
学校臨床心理学専攻の教育課程の特色は,主に以下の3つの項目に示すとおり。
1)学校現場や地域にある施設での実践経験を科目に取り入れていること。
附属学校との連携を前提に,中長期的に実践経験を得ることのできる科目を用意することで,現場でのOJT(On the Job Training)と大学でのOff-JT(Off the Job Training)の融合状態である自己発展,すなわちOJD(On the Job Development)の要素を取り込むことができる。この科目により得られた実践知を学内での専門知と融合させることで,より生きた知識として弁証法的に高めることができる。
また,学校現場だけにとどまらず,地域の医療機関や福祉施設等での臨床心理実習を実施することで,学校を中心として同心円状に広がる地域や環境から学校組織をバックアップすることの重要性を学ぶことが可能となる。つまり,コミュニティスクールという観点からの臨床援助について学ぶ機会とする。
2)地域に開かれた臨床実践の場:附属臨床心理センターでの臨床心理実習
不登校や引きこもり等,今日の学校が抱えている課題や子どもを取り巻く現状は,学校外の機関による支援も必要としているが,教育学研究科附属の臨床心理センターにおいては,学校教員だけでは手が届かないところに対し,専門的見地からの介入・支援を行っている。本専攻に所属する院生は,同センターが委任する相談担当者(実習生)であり,臨床心理士の資格を有する専門家(大学院教員)の指導を受けながら,臨床実践経験を積むことが可能である。同センターでの援助対象者は,子どもに加えて,その保護者や学校教員及び一般の方々も含まれる。地域に開かれた同センターで,実践経験を積むことにより,学校や医療機関との連携や援助対象者との関わり方等についてより深い理解を得ることができる。