学部・研究科等の特色等
●学修成果基盤型教育(アウトカム基盤型教育 Outcome-Based Education(OBE))
滋賀医科大学では、学生が卒業時までに身につけておくべき知識・技能・態度に関する能力(アウトカム)を卒業の認定に関する方針(ディプロマ・ポリシー)に基づいて策定し、それを達成するようにカリキュラムを含む教育全体を作成する学修成果基盤型教育(アウトカム基盤型教育)を行う。
●プロフェッショナリズム教育
医師・医学研究者に求められる高い倫理観を涵養するために、プロフェッショナリズム教育を第1学年から第6学年まで段階的にかつ継続して行う。
・第1学年では、医学概論I・II、早期体験学習、附属病院体験実習、全人的医療体験学習Ⅰなどの講義(小グループによる討論会形式、ロールプレイ形式を含む)や実習を行い、医療や福祉のさまざまな実践活動に触れ、医療者として相応しい人間性、高い倫理観や能動的学習態度を身につけることを目指す。
・第2学年では、地域医療体験実習Iにおいて、地域で展開されている医療・保健・福祉の現場に参加し体験することにより、地域医療の実際について学び、かつ医療人に求められている職責について自覚する。また、倫理学では、生命倫理に関する諸問題について深く考える機会とする。
・第3学年から第4学年における医の倫理I・II・III(講義、小グループによる討論会形式、ロールプレイ形式)では、医学研究領域及び医療領域における社会的・倫理的な課題(医師患者関係、生命倫理、緩和医療など)について学び、自ら深く考える機会とする。さらに、社会医学フィールド実習を通して、医師に求められている疾病発症予防や健康増進に関わる職務・役割について学ぶ。地域医療体験実習IIでは、地域医療体験実習Iで学んだことをさらに発展させる。
・第4学年から第6学年における臨床実習(ローテーション)、臨床実習(アドバンス)及び学外臨床実習では、疾病に関する知識、基本的な診療技術に加え、患者さんに深い敬意と思いやりを持ち、また医療チームのスタッフと良好な関係を築き医療を実践していく能力を育成する。
●診療参加型臨床実習(クリニカルクラークシップ)
第4学年に実施する2つの共用試験、コンピュータを用いた客観試験(Computer Based Testing(CBT))及び客観的臨床能力試験(Objective Structured Clinical Examination(OSCE))により、診療参加型臨床実習を行うに必要な知識・技能・態度を有するかを全国レベルで評価を行う。合格者は、第4学年から第6学年における臨床実習(ローテーション)、臨床実習(アドバンス)、学外臨床実習を行い、診療チームの一員として医師として必要な高い倫理観や疾病に関する知識、基本的な診療技術や態度を学ぶことを目指す。
●医学知識、問題対応能力およびコミュニケーション能力
臨床医学の各分野は、系別統合講義として臓器別にまとめ、関連する基礎医学講座や臨床医学講座が連続して講義を行う。また、少人数のグループで主に症例を用いて行う少人数能動学習では、課題発見能力、問題解決能力、能動的学習態度やコミュニケーション能力を養成することを目指す。
科学的探求心
医学・医療の発展のための医学研究の重要性を理解し、科学的探求心(リサーチマインド)を養うために、学生自らが研究活動に従事する実習科目を行う。
基礎医学研究入門Ⅰ・Ⅱ(第1学年/第2学年、選択)は、本学独自の取組みである「研究医養成コース」と連携した授業科目であり、実際に研究医養成コースに参加し、基礎医学講座・研究センターにおいて研究活動を行いながら、入学後早い段階から医学研究への興味を涵養し、研究に必要な知識や技能の修得を目指します。研究室配属(旧・自主研修)(第3学年の8~9月、必修)では、学内研究施設に加えて、国内研究施設や海外の研究施設で最低4週間の研究活動を行い、その成果を論文形式でまとめる。なお、その成果は学内、学外の研究会などで発表することを強く推奨している。
また、国内の分子細胞生物学、神経科学、遺伝学、生理学、生化学、免疫学、臨床医学の各分野のトピックスについて第一人者の先生方に紹介していただく医学特論を第1学年に開講しており、医学研究の醍醐味を味わえるよう企画している。
●医学教育モデル・コア・カリキュラムへの準拠
滋賀医科大学のカリキュラムは、医学教育モデル・コア・カリキュラムを参考にしており、モデル・コア・カリキュラムに示された教育内容項目との対応を確認のうえ、それに準拠した授業科目・内容をカリキュラムに配当している。
文部科学省が公募した「地域医療等社会的ニーズに対応した医療人教育支援プログラム」に申請し採択された「一般市民参加型全人的医療教育プログラム」では、県内の診療所から紹介された患者宅を訪問し、患者の疾病の背景や社会的環境についてインタビューを行うユニークな取り組みであったが、採択期間終了後は、そのプログラムを大学独自の授業科目「全人的医療体験学習」として選択科目化している。当該科目は、入学初年次から患者の立場を尊重した医療について考える機会となっている。
実際の医療の場を意識しカリキュラムを編成しており、たとえば「臨床診断学」では、10人程度の少人数によるグループで、能動的な学修態度を身につけることを目的とした学修をおこなう。臨床における具体的な状況が事例として与えられ、少人数グループ討論を通して学生が自主的に自分に必要な学修項目を設定し、自らの力でそれを解決することを通して、問題発見解決型の学習態度を修得させようとするものである。学生が、この経験を臨床実習や卒後の実際の医療の場で生かすことが期待される。
また、「臨床実習入門」では、臨床実習に必要な基本的診療能力を身につけるために、主にシミュレータを用いたロールプレイによる学修をおこなう。最終的に、態度・技能・知識について共用試験(CBT・OSCE)により総括的な評価を受け、第4学年後期からの臨床実習に備えている。
本学では基礎系研究医の養成のため、学生の主体的な探究活動を支援し、課外活動としての研究の場を提供する「研究医養成コース」を設置しており、研究に興味・関心を持つ学生が参加し活動している。簡単な手続きで、入学初年次からでも当該コースに参加することができる。本格的に研究テーマを設定する段階では、将来の進路に応じて4つの研究領域から1つの専攻を選択し、教員から研究指導や技術指導を受けながら研究をすすめるとともに、大学院医学系研究科博士課程の講義も聴講できる。
なお、本コースを経て大学院医学系研究科博士課程に入学した場合、早期修了、奨学金貸与等の特典を受けることができる。博士課程への入学に際しては、Aプラン(医学部第4学年を終了時に入学し、博士課程修了後に医学部第5 学年に復帰するPhD-MDコース)、Bプラン(医学部卒業後ただちに入学)、Cプラン(医学部卒業後の初期臨床研修2年目から入学)の3つのプランが用意され、専攻している研究領域の特性等を考慮し、ひとつを選択することとしている。
近年、ビッグデータの利活用、バイオインフォマティクス、画像診断、病理診断など、最新の医学・医療の分野においても、数学、統計学、データサイエンス、情報科学、AI・機械学習の理論・技術が応用されている。医学部の学生が将来医療現場に出たとき、これらの理論・技術を正しく理解することで、活用の幅が拡がると共に、新しい医療技術を生み出すことが期待されている。
本学では、学部教育の正規課程において、学生の数理・データサイエンス・AIへの関心を高め、かつ、数理・データサイエンス・AIを適切に理解し、それを活用する基礎的な能力を育成することを目的として、数理・データサイエンス・AIに関する知識及び技術について体系的な教育を行っている。
この度、既存の取組みに基づいた本学の「医療人育成を目指した数理・データサイエンス・AI教育プログラム」が、内閣府・文部科学省・経済産業省の3府省が連携した「数理・データサイエンス・AI教育プログラム認定制度(リテラシーレベル)」に認定された(令和3年8月4日)。
本教育プログラム(「医療人育成を目指した数理・データサイエンス・AI教育プログラム」)では、数理・データサイエンス・AIの基盤的な内容に加えて、医療現場への応用と限界に関する事例の教育も積極的に取り入れ、医学・医療を学ぶ医学生に特化した教育プログラムを提供し、数理・データサイエンス・AI領域の新しい医療技術の創出に寄与できる人材の育成を目的としている。
今後、プログラミング実習、画像診断、病理診断、医療イノベーション学習などを授業内容に積極的に取り入れながら、数理・データサイエンス・AI教育プログラムをさらに充実させていく。