学部・研究科等ごとの目的
島根大学大学院教育学研究科は島根大学憲章に基づき,現代社会・地域社会の有する教育課題を解決することのできる高度の専門的能力及び優れた資質を有する教師の養成を設置の目的としています。学生が深い学識,卓越した教育実践力を身につけることができるよう,教育に関する多様な学問分野の教育実践研究を,地域の教育課題に立脚しながら進めるとともに,その成果を広く社会に還元し,山陰地域の教育力向上に貢献します。
入学者受入方針(アドミッション・ポリシー)
求める学生像(入学前に期待される学修内容)
教育実践開発専攻は,社会構造の急激な変化や高度情報化社会への変化などで生じる様々な教育課題(地域の教育課題)を探究し,解決に向かって具体的な方策を立て,人々との協働の中で熱意をもって取り組むことのできる高度専門職としての教師を養成するため,次のような人を求めています。
1.教員に必要な基本的知識・技能,高いコミュニケーション能力,子ども理解力をもち,さらに将来スクールリーダーをめざす上で必要とされる高度の専門的能力を身に付けようとする人
2.教育現場での一定の教職経験を有する現職教員で,主幹教諭等のミドルリーダー,今後,指導主事や学校管理職としての活躍が期待される人
入学者選抜の基本方針(評価方法とその扱い方)
上述の人材を得るため,次のような入学者の選考を行います。
1.一般入試
教育実践開発専攻において高度の専門的能力を身につける上で必要とされる基本的知識・技能を確認するための筆記試験(論述式)を課す。加えて,教育実践開発専攻における学修目標を確認するため,志望理由及び「『地域の教育課題に関する研究』テーマ調書」の提出を求め,これに基づく口述試験を実施する。筆記試験と口述試験の結果を総合して判定を行う。
2.一貫プログラム入試
教育実践開発専攻において高度の専門的能力を身につける上で必要とされる基本的知識・技能を確認するため,志望理由及び「『地域の教育課題に関する研究』テーマ調書」の提出を求め,これに基づく口述試験を実施する。
3.現職教員入試
教職経験に基づく資質・能力をみるため,筆記試験(論述式)を課す。加えて,教育実践開発専攻における学修目標を確認するため,志望理由及び「『地域の教育課題に関する研究』テーマ調書」の提出を求め,これに基づく口述試験を実施する。筆記試験と口述試験の結果を総合して判定を行う。
4.現職派遣教員入試
教職経験に基づく資質・能力及び教育実践開発専攻における学修目標を確認するため,志望理由及び「『地域の教育課題に関する研究』テーマ調書」の提出を求め,これに基づく口述試験を実施する。
教育課程編成・実施方針(カリキュラム・ポリシー)
1.教育課程の編成方針
(1)「学び続ける教師」に必要な資質・能力として,学校創造力,授業デザイン力,子ども支援力の3つを定め,これらをより高いレベルで身につけたスクールリーダーの養成を目標として教育課程を編成しています。また,3つの力を内容面から相互に関連づけ,特に山陰における教師の生涯発達を支える基盤となるよう「山陰の教育課題」,「エビデンスの収集・活用」,「クリティカル・シンキング」,「個と多様性」,「ICT活用」の5つの共通テーマ軸を設定しています。
(2)共通科目及び選択科目においては,学校教育研究の理論と方法を修得します。総合的力量を形成するため,「基盤科目」,「学校創造科目」,「授業デザイン科目」,「子ども支援科目」から共通科目20単位を必修としています。また,修了に必要な選択科目12単位に関しては,3つの選択科目群のいずれかに特化し単位を修得することで、求められている教育課題の解決や自らの課題意識等に特化した力量を身につけることが可能な教育課程編成を行いました。
(3)課題研究科目(地域教育課題セミナーⅠ,Ⅱ)では, 自ら設定した研究テーマに即して先行研究の収集・分析や,必要な予備調査等を行いながら,学んだ理論を地域教育課題の探究と解決に向けてどのように活かせばよいかについて吟味・検討を行っていきます。また,課題研究科目と連動して現職教員学生は「地域教育探究プロジェクトⅠ,Ⅱ」,学部新卒学生は「地域教育探究フィールドリサーチⅠ,Ⅱ」の実習科目に取り組み,実際の学校教育現場をフィールドとして,仮説に基づく授業や教育活動を計画的に試行します。
(4)教育学研究科教育実践開発専攻では,すべての授業科目において,持続可能な社会の実現の基盤となるSDGsの目標「4.質の高い教育をみんなに」とその達成への理解を促します。また,特に「共に生きる場としての学校教育研究(2単位)」や「子ども理解・支援の理論と方法(2単位)」での学修を通じて,児童・生徒の個性を尊重し,子どもや保護者を取り巻く人や機関,制度をつむいだ組織的な実践ためのより高度な知識・態度の基盤を修得することで,SDGsの目標「3.すべての人に健康と福祉を」の達成に資する人材を育成します。「多様化時代の学級経営(2単位)」や「学校におけるガイダンス・カウンセリングの実践的研究(2単位)」での学修を通じて,多様な個を包摂した社会を発展させる市民を育成するためのより高度な知識・態度の基盤を修得することで,SDGsの目標「16.平和と公正をすべての人に」の達成に資する人材を育成します。「カリキュラム開発の実践的研究(2単位)」や「学校経営の理論と実践(2単位)」での学修を通じて,教職員間や,保護者や地域住民などと連携・協働するためのより高度な知識・態度の基盤を修得することで,SDGsの目標「17.パートナーシップで目標を達成しよう」の達成に資する人材を育成します。さらに,全ての授業科目において,SDGsの17の目標との対応関係をシラバスに記載し,学生に授業内容とSDGsとの関係理解を促します。
2.教育課程における教育・学修方法に関する方針
(1)共通科目及び選択科目においては,授業方法として事例研究やワークショップ,附属学校や実習校での授業参観などを多く取り入れ、具体的な教育課題に即した双方向的な学び,主体的かつ体験的な学びとなるよう留意しています。また,研究者教員と実務家教員の協働,現職教員学生と学部新卒学生との協働の場を設けることにより,多様な視点にふれながら,理論と実践の往還を促し,学生の教育に対する深い学識,卓越した教育実践力を身につけます。
(2)課題研究科目では,自ら設定した研究テーマに則して先行研究の収集・分析を行ったり,必要な予備調査等を行うことにより,学んだ理論を地域教育課題の探究と解決に向けてどのように活かせばよいか,考察する力を身につけます。
(3)実習科目では,実際の学校教育現場をフィールドとして,仮説に基づく授業や教育活動を計画的に試行することで,学部新卒学生は,各自のこれまでの教育に関する様々な学びや経験から導かれた問題意識に基づいた教育実践力を,現職教員学生は勤務校やその周辺地域の教育課題に対するプロジェクトの企画から組織内での調整に至るまでのより総合的な力量を身につけます。
3.学修成果の評価の方針
各科目の学修成果は,試験や課題等の成績及び取り組み状況等を考慮し,到達目標の達成度に応じて評価します。到達目標や成績評価の方法については,授業内容の詳細とあわせてシラバスにおいて科目ごとに明示します。なお,各授業科目の到達目標は,現職教員学生と学部新卒学生のそれぞれに設定しています。
学位授与方針(ディプロマ・ポリシー)
・人材育成目標(社会における顕在・潜在ニーズ,修了生が身につけるべき資質・能力)・学位授与の方針
教育学研究科教職開発実践専攻では、専門職修士課程において2年(長期在学プログラムにおいては3年)以上在学した上、所定の単位を修得し、以下に掲げる資質・能力を身につけた者に教職修士(専門職)の学位を授与します。
1.学び続ける教師の基盤として求められる深い学識を身につけている。
2.学校創造力,授業デザイン力,子ども支援力を総合的力量として身につけている。
3.学校創造力,授業デザイン力,子ども支援力のいずれかについて,高度の専門的能力を身につけている。
4. 地域の教育課題に立脚した研究テーマを設定し,学んだ理論と教育実践との往還を通じて,具体的な課題解決に取り組む教育実践研究の方法を身につけている。
5.立場や意見を異にする人々と協働しながら地域の教育課題を探究・共有し,その解決に向けて主導的役割を発揮することができる。
・目標としての学修成果(学修成果として身につく具体的な資質・能力の項目)
1.学級経営:児童生徒理解に基づき,開かれた学級経営によって児童生徒の成長を促す集団づくりを行うことができる。
2.学校を取り巻く社会的・文化的要因の理解:広い視野のもとで公教育および学校と相互に影響しあう社会的・文化的要因を把握することができる。
3.家庭・地域社会との協働・連携:家庭や地域社会の様々な人々の学校教育への関心やニーズを理解し,保護者や地域住民などと連携・協働する方策をリードすることができる。
4.ビジョンの形成と具体化:学校に関わる人々に共有・支持される学校のビジョンを形成し,その具現化を図ることができる。
5.協力体制と風土づくり:各学校の教育活動や学校経営の質を向上させるために教職員が連携・協働する校内体制と風土をつくることができる。
6.倫理規範とリーダーシップ:公教育である学校教育を担う教員として,職業倫理に基づくリーダーシップを発揮することができる。
7.学習にかかわる理論を踏まえた授業研究:学習にかかわる諸理論に基づいて,授業の設計,実施,評価を行うことができる。
8.理論と実践の往還:教科教育や教科内容の知識を指導や指導の改善に生かすことができる。
9.学習観の発展・指導の改善:教育実践や自らの学習観について,省察することができる。
10.カリキュラム・ マネジメント:カリキュラムの編成・改善に必要な知識を身につけ,「開かれた学校」としてのカリキュラムを構想・改善することができる。
11.教育相談と生徒指導:教育相談や生徒指導に関する理論・技法及び実際に行う上でのポイントを理解し,深い子ども理解に支えられた関わり案の作成と実践,修正ができる。
12.子ども理解と授業改善:インクルーシブ教育システムやユニバーサルデザインの視点を取り入れた授業を構想・実践・評価し,授業改善の提案ができる。
13.障がいのある子の理解と関わり:障がいや障がいのある子の特徴とそれへの適切な関わりを理解し,それらをふまえた個別の計画の作成・実践・評価・改善をすることができる。
14.校内外での連携・協働:校内組織や他機関・他分野の役割を理解し,地域の実情をふまえながら,子どもや保護者を取り巻く人や機関,制度をつむいだ組織的な実践をすることができる。