科学技術の発達にともなう物質文明の爆発的な拡大によって、今私たちはかつてな いエネルギー問題や環境問題に直面しています。人類社会にとって、経済成長を維持しながらエネルギー確保および環境保全を達成すること、すなわちトリレンマ(三者相克)を克服し、三者の調和ある発展をはかっていくことが最大の課題になっています。総合理工学府では、これらの三者の調和ある発展に寄与できる人材の育成を強力に推進することを目指した教育組織として、量子プロセス理工学専攻、物質理工学専攻、先端エネルギー理工学専攻、環境エネルギー工学専攻、大気海洋環境システム学専攻の五専攻体制を取っています。
本学府は、多くの大学院専担講座を擁する総合理工学研究院と二つの附置研究所 (協力講座)とで構成される特色ある大学院教育組織であるとの立場から、社会にインパクトを与える新しい学問分野を切り開くことを強く意識した専攻構成を取っています。各専攻は、生活を支える産業基盤の創生への貢献(生活軸)および人類生存基盤の確立への貢献(生存軸)という2つの基軸の中で位置づけられており、それぞれの視点からトリレンマの克服のための教育研究を行います。同時に、共通講義、横断科目、副専攻制度などを通して各専攻間の有機的な連携をはかり、それぞれの専門と 柔軟な思考力を兼ね備えた研究者や技術者の育成を行ないます。
本学府の教育研究目標を約言すれば、「未来を見据えた物質・エネルギー・環境を融合した学問体系の構築とそれを身につけた人材の育成」となります。このような教育研究目標を掲げた大学院教育組織は、国内はもとより世界的に見ても例がなく、その成果は今後の人類社会に大きく貢献するものと期待されます。
学部・研究科等の特色等
修士課程の2年間は、コースワークを通じて学部に比べより専門的で高度な知識を学ぶだけでなく、修士論文研究を実施する事を通して、未知の問題にチャレンジする『研究』という営みにおける方法論を修得します。問題や課題の特定、関連分野の研究動向の関連、問題へのアプローチのための手法の会得、仮説の検証方法、研究成果のまとめ方など。
こうした一連のプロセスは、研究だけでなく、産業界において日々必要となる大小様々な問題解決、大局的視点に立った戦略策定に対する基礎トレーニングでもあります。
九大総理工では、多くの学生が修士課程の段階から、恵まれた設備を使い、知識経験豊富なスタッフの指導の下、世界最先端の研究を自ら行っています。修士の段階であって、自身の研究成果を英語の論文にまとめ、国際的なジャーナルで発表している学生も多くいます。
そうした環境に惹かれ、九大だけでなく他大学や高専専攻科からも、もっと本格的な研究をしてみたい、学びたい、新しく先端的な環境で勉強したい、という意欲を持った学生が九大総理工には集まっています。
なお、特に研究の道に強い希望を持つ九州大学の学生については、飛び級により学部4年をスキップして直接、修士課程に進学する道も用意されています。