学部・研究科等の特色等
生命理工学類は、これまで理工学域に無かった「生物と生命現象の理論と応用を学ぶ」ことに特化した全く新しい学類です。生命の原理を解明する理学系の2コース(生物科学コース、海洋生物資源コース)と、生物を活かして人の役に立つ技術開発を行う工学系の1コース(バイオ工学コース)から成りますが、最初は理工両方の基礎的な知識と技術を学類全体で学び、その後、各コースで高度な専門的知識と技術を深く学びます。カリキュラムの面では、実験や演習に重点を置いた専門教育を行い、自主性、創造性、協調性を育てます。さらに、プレゼンテーション能力の向上をめざす指導により、自然の本質を追求し、その成果を豊かな暮らしに応用できる創造性あふれる科学者やエンジニア、教育者の育成をめざしています。
・「生体分子から生物社会まで」を探求し、生命システムの統合的な理解を深めていきます。
「生体分子から生物社会まで」を視野に入れ、生命を統合的なシステムとして理解する「生物科学コース」。多くの実験や実習を通して、緻密な観察力、鋭い洞察力、そして精巧な論理的思考能力を養うことができます。生きた動物・植物・微生物やそれらの細胞、これらを構成する生体分子を扱う中で、生命科学の深淵な魅力に触れることができる実践的なトレーニングにより、生命現象に潜む本質的原理と生物の多様性を生み出したダイナミクスを解明することを目標とします。そして、得られた成果を社会のために生かす研究者・技術者・教育者の育成をめざしています。
・生命システムの作働原理を明らかにし、生命倫理の認識を深めます。
現代の生命科学は、ゲノム情報の獲得を極めて容易にした上に、ゲノムを標的とする任意の遺伝子操作さえ可能としています。さらに、膨大なデータを扱いうる最先端情報科学との融合により、遺伝学的方法論の自由度が歴史上最も高い時代を迎え、その技術をヒトへ適用することも視野に入っています。すなわち、生命科学の正しい理解なしに現代の我々の生活が成立することはありません。、生物科学コースでは、分子・細胞・個体レベル全般にわたる生命システムの作働原理を学ぶと同時に、クローン生物やゲノム・生殖・再生医療に伴う生命倫理の問題を正面から議論し、客観的に判断できる人材の育成をめざしています。
・海洋と陸水圏の生き物に学ぶ
地球上の大部分の面積を占める海とそれに繋がる陸水圏は多種多様な生命を生み、育んでいます。海洋生物資源コースでは、そこで見られる命の営みを対象に『分子から生態系レベルまで』カバーする幅広い分野で生物学を学びます。そのために、分子細胞生物学、発生生物学、海洋生物学、資源生物学、保全生物学、生態学などの専門科目とそれぞれに対応した実験・実習を設けており、これらを通して生命と環境を統合して科学するための視点、方法論、分析技術、思考法を身につけていきます。
・生命環境科学の問題に向き合い、新たな解決法を提示する力を養うために
我々の社会は、人間の健康問題から安全な食料資源の確保そして環境保全に至るまで、実に様々な問題に直面しています。本コースでは、実験・実習・野外調査など多くの生物にふれあえる実践的なトレーニングを行い、実物教育のカリキュラムを通じて、分子、細胞、個体、集団、生態系レベルで多角的に生物を観察・理解・制御する能力を涵養していきます。研究室配属後には、これら知識と実践能力を、具体的な研究活動でさらに発展させ、より広い科学的視点と応用性を備えた生物学の修得を目指します。日進月歩で状況が変わる生命環境科学の問題に対応し、様々な視点・立場からこれらの問題を解きほぐしていける人材の養成をめざしています。
・生物を利用した有用物質の生産
バイオ工学コースでは、生物の仕組みや機能における分子レベルでの知識や考え方を工学の立場からとらえて、実用価値の高いもの作り開発に活かし、社会の幅広い分野で活躍できる人材を育成します。そのため、生物工学関連や化学プロセス関連の科目と実験・実習を通して、もの作りに欠かせない問題発見能力と論理的思考による問題解決能力、科学的知識とその展開能力を身につけ、生物を利用した物質生産に関する技術を実践的に習得します。
・情報技術で切り拓く生命科学
近年、ヒトの全DNA配列情報を始めとして様々な生命情報が次々と蓄積されています。コンピュータを駆使することで、これらの膨大な生命情報から、複雑な生命現象や生物間相互作用の理解、食品や環境、医療分野における有用知識の発見が可能となっています。そのため、本コースでは、分子生物学や遺伝子工学に加え、生命情報処理に関する科目とコンピュータ実習を通して、従来の生物学とは異なった視点で生命科学を見ることのできる人材を育成します。